始計篇
兵は国の大事。死生の地、存亡の道なり。察せざる可からず。
戦争は国の一大事であるので、慎重に検討しなければならない。
・ 安易な戦争の判断は、かえって国を滅ぼす一因となる。
将とは、智・信・仁・勇・厳なり
将は、智力、信頼、仁愛、勇気、厳格を備えてなければならない。
・ この5つの原則が、指揮官であるための要である。
将、吾が計を聴かざるときは、之を用うれば必ず敗る。之を去らん
指揮官や君子の計略に従わない将を用いれば、必ず敗れる。解雇せよ。
・ 命令を聴かない将は、戦争ばかりでなく国が滅ぶ一因になることがあるので解任せよ。
能なるも之に不能を示せ
出来るのに、出来ないフリをしろ。
・ 始めは処女の如く、後には脱兎の如し。弱いフリをして相手が油断したところを、速やかに叩け。
用うるも之に用いざるを示せ
使っているのに、使っていないフリをしろ。
・ 上記と同じく、まずは相手を騙せ。そうすれば隙が出来る。
近づくも之に遠ざかるを示し、遠ざかるも之に近づくを示せ
敵が近づいてきたら遠ざかっているように見せかけ、敵が遠ざかったら近づいているように見せかけろ。
・ 敵を翻弄することが大切である。主導権とは決して戦力差によって確立するものではない。
強なれば之を避けよ
敵が強ければ正面衝突は避けろ。
・ 戦力差による戦術の転換が重要である。衆寡の用を識る者は勝つのだ。
怒らせて之を撓し
卑うして之を驕らせよ
佚すれば之を労せ
親しければ之を離せ
敵を怒らせて混乱させ
へりくだって思いあがらせろ
相手が楽をしていれば疲れさせ
団結していれば分裂させろ
・ どんな時でも、まずはこのような敵のスキを突け。
其の備え無きを攻め、其の不意に出ず、此れ兵家の勝にして先には伝う可からざるなり
敵のスキや不意を突け。しかしこれは状況に応じて使用するもので、先に計画しておくものではない。
・ 状況に応じ敵の弱点を速やかに攻撃しろ。計画されておらずとも、自分で考える力が必要である。
算多きは勝ち、算少なきは勝たず。況や算無きに於てをや
勝算が多ければ勝ち、少なければ勝てない。勝算が全くなければ、勝てるわけがない。
・ 勝算を考えることは重要である。その上で勝算の無い戦いは、そもそもするな。